借りた車 シーン2

 今となっては、誰が言ったのか・・・只苦笑いするしかない。
この性悪女をこのまま家に返してしまうのは、余りにも味気ない
借りてから今日まで、彼女の全てを感じる程の走りもしていない
折角のこのダイナマイトボディーをこのまま見過ごすのも、
やはり男として失礼だと思う。この情熱的な彼女を・・・・

 そんなことを思っている間にヒートゲージが徐々に上がって
ほてった身体をもてあますかのように私を誘ってくる、
今日は、この性悪女の誘いに乗ってみよう、
そして彼女がまいったと言うまでこれからたっぷりと情熱的な
ダンスを楽しもう、海と山の神戸を二人で情熱的に大人のダンスを
陽が暮れるまでのロングディスタンス・・
 しっかりとシートベルトを締め、セミバケットシートに
深く腰を入れる、背筋を伸ばしシートポジションを確認する。
いつのまにか手になじんだこのステアリング、少々重いが
こいつには丁度良い、走り始めると私の手の動きに敏感に
答えてくれる。エンジンも微妙なアクセルワークにも遅れることなく
反応してくれる。感度の良い身体だ、そう寝起き以外は、
良い娘なのだ。
 
 シフトをDレンジに入れゆっくりと車道に進みでる、
平日の昼間は、そうたいして車の量も多くない、でもここは、
住宅地、いきなりエキサイトなモードに入ることも出来ない。
区画の外に出て外周には入りタコメーターは、2000回転の手前
ギアもトップまでは、入っていない。
 ここから橋を渡りハーバーハイウェイに乗って三宮まで
港沿いの高架を走る、料金所の前後が気持ちが良い眺めだ
突提の上を滑るように走る。港神戸を感じるには、いい眺めだ
彼女はと言うと、もっと踏み込めと少々ご不満気味だ・・
 三宮でパーキングに彼女を待たせたままコーヒーと
ハンバーガーを買いに行った。相変わらずここは、人が多い
少しすねながら蹲る様にしてパーキングで私の帰りを待っている
そんな姿は、時としていじらしくも思える。
 助手席にランチをそっと置きゆっくりとパーキングを出る
一路北に向いて、北野坂を登ってゆく、震災後店が変わった所が
沢山ある、ケーキ屋のリュバンドール(フランス語で金のリボン)
が少し移動して以前より広い店構えになっている。
 こんな私がケーキ屋の話なんて笑われそうだ・・
 山本通りを西に(一方通行)トアロードとぶつかる手前に
以前、北野武のカレーショップ「北野カレー店」があった
もうずいぶん昔の話だ。
 そこから少し行きますとここにもまたケーキ屋のFUKE庵
でもそこまで行かず、ずっと手前に派出所がありここを北に
そこからが走り屋にとって伝説的なワイディングロード
「再度山ドライブウェイ」が始まる。 
 小さなトンネルをくぐり、Uターンを二つ、再度公園の北を
駆け上がり、ビーナスブリッジの下を抜け、レストラン(http://view.adam.ne.jp/setoy/pic/kobe/venus_a.html)
「トゥール・ドール」のわきを回り込み・・只、本物の恋人となら
ここの駐車場で神戸を眺めながらベンチでランチなのだが、
今日はこいつの為にもう一つ上の車の中から眺められる
パーキングまでゆっくりと走らせる。
 ここは、道がタイトな上ターンがきついおまけに路面の
ミューが低い、雨が降ればこんなじゃじゃ馬すぐに
横を向いてしまうだろう。
 よくもまーこんな所で伝説を作ったものだ・・
木の実レーシング「片山敬済」350CCの世界チャンピオン
であり、4サイクルマシンで500CCの表彰台に乗った男
今では、知っている人も数少ないだろう・・・
 ここなら一緒に眺めをみながらランチを決め込める。
今日はよく晴れて、大阪湾に向かっての眺めがはっきりと見える
風が気持ち良い、これから暑い時間を過ごす二人には、少し
もどかしい時間かもしれないが今は、この時間の流れが心地良い


© Rakuten Group, Inc.